理事長あいさつ

北九州国際技術協力協会
理事長 山本 郁也
平穏に過ぎたゴールデンウィークのある日、実家のある大阪へ里帰りしたついでに万博会場に行ってみた。と言っても、現在華々しく開催している大阪関西万博ではなく、55年前に開催された大阪万博の会場跡である。ガイドブック片手に半年かけて全パビリオンを制覇した高校当時の記憶を55年ぶりに確かめようと思いついたからである。今は記念公園となった跡地を回って思ったのが、よくも半世紀以上前にこんな規模の博覧会を開催できたものだということである。シンボルの「太陽の塔」のスケールの大きさもそうだし、その入場者数の6400万人は上海万博の7300万人に次ぐ歴代2番目らしい。当時、人口がやっと1億人を超えたばかりの島国で6000万人以上を集めたと言うか、集まったパワーには驚くしかない。
しかも、記憶にある55年前の日本はそんなに豊かな国ではなかった。やっと先進国と呼ばれるグループに入りつつある程度のレベルだったように思う。外国旅行や自家用車などはまだまだ夢の時代だった。それにもかかわらず国や国民全体が精一杯、元気いっぱいに背伸びをしていた印象だ。確かに今から考えればいろんな問題を抱えていたのも事実だが、振り返って今の日本はどうしてこんなに元気が無いのかと考えさせられる。
KITAが創設されたのは、この大阪万博からちょうど10年後の1980年なので今年で45年目となる。その当時でもまだまだ発展途上であった日本で、自分たちの技術や経験を世界の国に知ってもらおうという理念は、ある意味崇高でもあり、またある意味身の程知らずだったのかも知れないが、戦争でほぼゼロから再出発した国のエネルギーは海外からの多くの研修員の皆さんに元気を与えたのではないかと思う。それから45年。世界は大きく様変わりしてきたが、その一つが日本の元気が無くなったことでは寂しい。世界が変わる中でも戦争や紛争だけは相変わらずなくなることはなく、KITAへの研修員の中にもこれら紛争に巻き込まれた国々から来られた方もいる。せめて平和で元気なエネルギーを持ち帰ってもらえる日本であり続けたいし、微力ながらその手助けとなれるように今後もKITAの活動を続けていきたいと思う。関係者の皆様のご協力をこれからもお願いいたします。